乳酸菌の定義
乳酸菌の定義はどのように決められていますか
テレビのCMなどでよく聞かれる乳酸菌ですが、乳酸菌という名前の細菌が存在すると認識されている方が多いと思います。しかし、実は乳酸菌という名前は微生物学上の学名ではなく、ある機能をもつ細菌の総称を意味しています。
その機能とはブドウ糖(炭水化物)から多量の乳酸を産生する能力を持っていることです。
これらの機能をもつ細菌の種類は約600種類に及んでおり、これら細菌を総称して乳酸菌と呼んでいます。
微生物学的に定められている乳酸菌の定義は、次のような性質を有する細菌群の総称です。
- 消費したブドウ糖に対して50%以上の乳酸を産生する
乳酸菌の定義の中で最も重要な条件です。
消費されたブドウ糖から乳酸を産生する細菌はたくさん存在しますので、これらの菌との区別するために50%以上のブドウ糖の発酵形式から定められています。 - 細胞はグラム陽性である
通常、細菌類をグラム染色という方法によって色素で細菌を染色したとき、染色の違いによって細菌をグラム陽性・グラム陰性に分類します。
この染色の違いは細胞の壁の構造によって左右され、生態学的にも全く異なりますが、グラム陽性菌は一般的には病原性が高くないのも特徴です。
- 細胞の形態は桿菌又は球菌である
細菌を形態学的に分桿菌・球菌・らせん菌に分類されますが、細長い棒状になっている細胞を桿菌と呼び、球状になっている細胞を球菌と呼びます。 - カタラーゼ陰性である
カタラーゼとは酵素の一種であり、過酸化水素を酸素と水に分解する触媒の働きをもっています。
酸素呼吸をおこなう動物・植物をはじめとして酸素呼吸をする微生物はこの酵素を持っています。
しかし、乳酸菌は酸素呼吸を行わない嫌気性細菌とよばれこのカタラーゼを持っていない陰性です。 - 内生胞子を産生しない
菌類が胞子をつくる過程において細胞の中で作られるときに内生胞子と呼んでいますが、形態学的細菌・嫌気性菌などで存在する類似の細菌と区別するために内生胞子を産生しないという条件をつけています。
- 一般的に運動性がないが、まれに若い細胞で運動性を有する
自力で動くことができないことであり、これも類似菌と区別するための条件です。 - 安全なGRAS細菌群である
GRASとはGenerally Recognized as Safeの略語であり、一般的に安全と認識されるという細菌群のことを意味します。
このことは、乳酸菌を食品として摂取されるという観点からは非常に重要な性質です。
人類が昔からの食品として摂取してきた長い経験が、この細菌の安全性の証明ともいえます。
良く知られている大腸菌も実は乳酸を産生しますが、グラム陰性菌であるため、上記の定義の2にあてはまらないので乳酸菌ではありません。
また、微生物学上ではなく、細菌の生育場所によって乳酸菌を次の3つ名称で分類されることもあります。
- 腸管系乳酸菌
- 動物性乳酸菌
- 植物性乳酸菌
- 属
- 種
- 株
乳酸菌の名前の付け方
約600種類存在する乳酸菌の名前の付け方は、次の3つの分類の組み合わせによって定義づけをされています。ヤクルトのシロタ株は正式名ではラクトバチルス属カゼイ種シロタ株であり、便秘の予防・免疫力アップ・花粉症予防・大腸がんの予防効果があります。
同じ属にはラブレの名前で知られている乳酸菌があります。
正式名称はラクトバチルス属・ブレビス種・亜種コアギュランス・ラブレ菌株で、便秘の予防と免疫力アップの効果だけです。
このように、同じ属の乳酸菌でも種によってその働き・効果には若干の違いがあります。
ちなみに、L92乳酸菌も正式名称はラクトバチルス属アシドフィルス種L92株です。