乳酸菌はどうやって発見された
乳酸菌が発見されるまでの発酵食品の歴史とは
我々が目で確認できないほどの0.3~1μmの大きさ(髪の毛の太さの80分の1)である乳酸菌が発見されるまで、発酵食品は食べられていたのでしょうか?現在、海外で記録として残されているのは液体の発酵食品であり、約8000年前に作られたコーカサス地方と約7000年前にイランで作られたワインが確認されています。
ワインはブドウの果汁を酵母によって発酵されて作られていました。
このころにはビールも簡単につくられていましたので、ワインは高級品として扱われていました。
その後、固体の発酵食品として確認されているのは約5000年前であり、ブルガリアの遊牧民がヤギのミルクを持ち歩いてところ、微生物の働きによって酸味のある液体と独特の風味のある白い個体に分かれてことから、これがヨーグルトの始まりといわれています。
日本における発酵食品は漬物・味噌・酒などがありますが、記録として残されているのは700年代であり、塩漬けの記録が木簡に記載されています。
誰がどのようにして乳酸菌を発見したのでしょうか
発見からその働きがわかるまでの約200年の間には多くの人が乳酸菌の研究に関係してきました。その経過を見てみましょう。
- 乳酸菌の観察・発見 (1700年頃) オランダ人の商人であり、アマチュアの科学者であるアントニー・ファン・レーウェンフックが自家製の顕微鏡によって多くの微生物をスケッチして記録していました。
- 乳酸発酵の発見 フランスの微生物学者であるルイ・パスツールは発酵・腐敗の原因は乳酸菌などの微生物にあることを証明し、乳酸発酵のしくみを発見しました。
- 乳酸菌の分離 イギリス人の医者であるジョセフ・リスターが初めて乳酸菌の分離に成功して、その分離方法を確立したのは有名なドイツ人のコッホです。
- 乳酸菌の働きの発見 パスツール研究所のメチニコフがブルガリア人に長寿者が多いのは乳酸菌を多く含むヨーグルトを食べていることが要因であるという説を唱えました。
多くの対象物は自分の周りにいる動物の糞便であり、その中に住んでいた腸内細菌を発見しています。
そして、乳酸菌は野菜・牛の乳を観察しているときに発見されたといわれています。
好奇心の固まりの素人の科学者の執念によって、乳酸菌は発見されました。
彼はフラスコの中でスープを加熱しその後どうなるかを観察しましたが、スープは腐敗しませんでした。
一方、加熱しないスープはそのままにすると腐敗し微生物が増加していることを発見しました。
つまり、スープの中にいた常在菌が自ら分裂・増殖していることを証明したのです。
さらに、パスツールは微生物が死滅することも証明しました。
このパスツールが創立したパスツール研究所がその後の乳酸菌の研究の拠点となります。
コッホは今までの細菌分離に必要な培養方法(液体培養法)を改良して固形の培地上で細菌の培養を行う平板培養法(純粋培養法)を確立しました。
この方法によって1899年にパスツール研究所のティシエ博士が赤ん坊の便からビフィズス菌を分離し、1900年にはオーストリアのモロー博士が赤ん坊の便からアシドフィルス菌を分離してから乳酸菌の研究が加速しました。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌が腸内にて増殖して腐敗菌(悪玉菌)の増加を抑制することによって老化現象を予防しており、このことから「乳酸菌の不老長寿説」を提唱しました。
これがきっかけとなって、ヨーグルトがヨーロッパに浸透していったといわれています。
このように18世紀初頭から20世紀の初頭の200年の間に渡る乳酸菌の長い研究の結果として、メチニコフがヨーグルトに含まれる乳酸菌の研究によって、1908年にノーベル 医学・生理学賞を受賞しました。
その後、日本においても1950年頃から微生物の研究は本格的に始まりましたが、2009年には日本のキリングループの研究所がアレルギー症状・花粉症を緩和する効果のある乳酸菌KW3110株(通称KW乳酸菌)を世界で初めて発見して話題となりました。
今後も、乳酸菌の知られていない驚くべき効果が発表されることを期待します。